にこぞう今回の旅は、一生忘れられないものにしてやるぞ~!!
出発の朝、僕はそう確信していました。 1週間の有給休暇、そして「本州4端制覇」という壮大な目標を立てていましたが…その結末はあまりにも残酷で、自業自得なものでした。
千葉県市川市の自宅を出発し、目指すは本州最北端。 けれど、僕がたどり着いたのは最北端の岬ではなく、400km先にある宮城県古川市のレッドバロンというバイクショップ。
野望はたった1泊2日で潰れてしまった。その原因は、数百円をケチった安物パーツクリーナーと、自分は大丈夫だというおごりが招いた結果でした。
恥を忍んで、その一部始終を記録します。
桜と暴風。4月の東北が教えてくれた「生」の感触



4月の東北は、ライダーにとって「春」と「冬」が同居する不思議な世界!
関東ではすでに葉桜となり、緑とピンクが入り混じってる桜の状態。そんな散りつつある桜を追いかけるようにバイクで北上するツーリングが開始しました。
今回の旅のテーマは下道縛り。 高速道路で一気に距離を稼ぐのではなく、その土地の空気、匂い、そして景色をダイレクトに感じたい。 そんな僕を待っていたのは、満開の桜と、それ以上に激しい自然の猛威でした。
(もし4月で、桜ツーリングをしたい!と考える人は春の東北ツーリングオススメです!)


宮城県に入った頃、空気が一変。道すがら「風が強いな~」とは感じてたものの、 気象庁から出されていたのは暴風警報。風速10mを超える風は行く手を阻みます。
ヘルメットの中まで「ゴーゴー、ボーボー」という濁音の風が入り込み、愛車は真横から巨大な力で押し流されました。初めて、反対車線の車と正面衝突するのでは?と思うほど強い強い横風を経験しました。


一瞬の隙をついて対向車線へと流されそうになる車体を、必死に抑え込みつつ 指先は強張り、ヘルメットの中で「頼む、風よ!止まってくれ!」と何度も独り言を繰り返す。そんな宮城県ツーリング。
もし、この風の中で高速道路を走っていたらと思うと、今でも背筋が凍ります。 下道を選んだことが、結果的に僕の命を救ってくれました。まさに走行中に生を実感しつつ、次はバイクから異音がするようになり…次第に自分の中の余裕がなくなってきます。
足元から響く不穏な音。高鳴る鼓動と消えた余裕



減速すると「シュンシュン」音がするんだが…
バイパスを快走していた僕を襲ったのは、目に見える暴風だけではありませんでした。 足元から忍び寄る異変が、じわじわと僕の精神を削っていきます。
アクセルを戻した瞬間の違和感


その音は、一定の条件下でだけ僕の耳に届きました。 加速している時や、クラッチを切っている時は聞こえません。 しかし、クラッチが繋がった状態でアクセルを戻した瞬間、足元から「シャリシャリ…」という不穏な音が響くようになりました。
さっきまでは鳴っていなかったはずの音。 一度気になり始めると、もうツーリングを楽しむ余裕なんて一瞬で消え去ります。
「気のせいじゃないか?」と自分に言い聞かせる自分と、「エンジンが壊れて自走不可に…なる?」と最悪の事態を想定する自分が、ヘルメットの中で激しく葛藤していました。
心ここにあらず。欠如していく集中力


異音の原因を必死に探ろうとするあまり、僕の意識は前方ではなく、常に足元へと向いていました。 「今のは何の音だ?」「振動は出ているか?」 そんなことばかりを考えている運転は、もはや「心ここにあらず」の状態です。 何か突発的な事態が起きても反応できない、ライダーとして非常に危険な心理状態に陥っていました。
不注意による事故がいつ起きてもおかしくない。 そんな極限状態の中で、唯一の救いは今回の旅のスタイルでした。 宿を予約せず「快活CLUB」を転々とする予定だったからこそ、「キャンセルしなきゃ」という焦りだけ全くありませんでした。
もし、ビジネスホテルなど予約していたら、無理をしてでも先へ進んでいたかもしれません。


レッドバロンでの宣告。原因は「自分」だった



俺のバイク…一体何がどうなってる?
不安に耐えかねてコンビニへ滑り込み、憂鬱な手でスマホを操作しました。 検索結果に表示されたのは、わずか1km先にあるレッドバロン。 その瞬間、僕の本州最北端への旅は、宮城県のレッドバロンへ行くための旅へと塗り替えられました。
千葉から400km走ってたどり着いたのは「ピット」


千葉県市川市の自宅から、はるばる400km。 本当なら、今ごろはもっと北の空の下で、達成感に浸っているはずでした。 それなのに、僕が必死に目指したのは景勝地ではなく、赤い看板のバイクショップ。 ピットに入り、店員さんに状況を説明しながら、自分の置かれた状況の滑稽さに笑いそうになりました。
店員さんは僕のバイクを見るなり、静かにこう尋ねました。 「チェーンに5-56使ってませんか?」 僕は即座に「使っていません!注油もしています!」と答えました。
しかし、その後の言葉に、僕は自分の過信を恥じることになります。
店員さん<「バイク用と書いてあっても、ホームセンターの安いパーツクリーナーはシールへの攻撃性が高いんです。専用品を使わないと、シール内の大事なグリスまで落としてしまいますよ。このチェーン、もう完全に枯渇しています」
僕の当時の状況を顔文字で表現すると…Σ( ºωº )からの(´・ω・`)ショボン…
これですね。
知識という名の「おごり」と恥ずかしさ


頭を殴られたような衝撃でした。 僕は今まで、YouTubeのメンテナンス動画を何本も見て、自分なりに勉強してきたつもりでした。 パーツクリーナーだって、裏面を見て「バイク対応」の文字を確認して買った。
数百円安いから。それで浮いたお金で美味しいものが食べられるから。 そんなケチな理由で選んだケミカルが、僕の愛車の寿命を縮め、1週間の休暇を終わらせたのです。 プロに指摘された悔しさはありません。 ただ、知識として知っていたはずなのに「自分は大丈夫だろう」と高を括っていた、その「おごり」が恥ずかしくて堪りませんでした。


魔法のように消えた異音。プロの仕事の凄み


(※少し走行したあとに撮影しましたが、メンテ後のチェーン画像です。見ての通りサビサビ…)
店員さんの提案で、その場でチェーンの清掃、張り調整、そして「正しいケミカル」での注油を行ってもらいました。 作業が終わって店を出て、恐る恐るアクセルを戻してみると…。「シャリシャリ、カチャカチャ」という音が、嘘のように消えていました。
「チェーンを適正な状態にするだけで、ここまで変わるのか」 プロの確かな技術と、適切なケミカルの威力を、文字通り肌で感じた瞬間でした。
異音は解決し、物理的には旅を続けることも可能ではありました。 しかし、店員さんから「応急処置はしましたが、寿命が来ているのは事実。早めの交換を」とアドバイスを受けたこと。 そして何より、この異音に怯えながら走ったことで自分の集中力が限界だと気づき、僕はここで撤退をすることに決めました。
挫折を「経験値」に変えて。リフレッシュへの決意



もしたしたらら…俺はMなのかもしれない…失敗は何だかゾクゾクしちまうんだよな…
旅の中止が決まった瞬間、僕の中にあったのは絶望だけではありませんでした。 不思議なことに、少しの納得感と、次への決意が湧き上がってもきました。
チェーンの寿命と、店員さんの優しさ


実は新車で購入してから一度も交換しておらず、安物クリーナーが最後の一押しをしてしまった形でした。1週間の有給を使い、準備万端で挑んだ本州4端制覇。 それがたった2日で終わってしまった喪失感は確かにあります。
大事故になる前にバイクが自ら「もう限界だよ、休ませてよ」と教えてくれたのだと思えば、これは「失敗」ではなくある意味「守られた」と解釈する事もできます。
ツーリング体力を高める一生のネタ


ツーリングのスキルとは、速く走ることでも、遠くへ行くことでもありません。 こうしたトラブルを一つずつ経験し、自分の判断ミスを認め、それを次の糧にしていく体力のことだと、身をもって学びました。
今回の出来事は、僕の人生の中で一生語れるネタになりました。 「千葉から宮城まで、400km走ってチェーンを壊しに行った男」として。 そう笑い飛ばせるようになった時、僕はまた一つ、ライダーとして強くなれる気がしています。
まとめ
今回の旅は、宮城県古川市で幕を閉じました。 得られたのは、本州4端の称号ではなく、ボロボロになったチェーンと、自分自身のメンテナンス能力の低さという現実。
しかし、後悔はしていません。 安物ケミカルの代償として失った1週間の有給は高い授業料でしたが、その分、専用品の重みと、引き返す勇気の重要性を骨の髄まで理解できました。
新品のチェーンリフレッシュして、愛車と向き合った状態で、再び本州4端制覇のリベンジへ向かいます。
皆さんも、愛車の足元から小さな音が聞こえたら。 どうか「自分は大丈夫」と思わずに、一度立ち止まってみてください。 その一歩が、あなたの命と、大切な旅を守ることになるはずです!







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